メタボリック症候群 健康回復の対策に待ったなし
「メタボリック症候群」に関する厚生労働省の調査結果が、とても重い。
二〇〇四年の国民健康・栄養調査から、生活習慣病に進行する危険性が高まる同症候群の有病者は約千三百万人で、一歩手前の「予備軍」も約千四百万人と推計された。両方合わせると約二千七百万人にのぼり、同症候群が成人に広がっている実態が初めて明らかになった。
国の対策の遅れが、こうした深刻な状況を招いたと言える。厚生労働省はやっと対策に本腰を入れ始めたが、健康診断の見直しなどあらゆる手を尽くして、国民の健康を取り戻さねばならない。
同症候群は内臓に蓄積した脂肪が一因となって高脂血症、高血圧、高血糖などを重複して発症した状態を指す。有病者、予備軍の割合は中高年になるほど増加傾向を示し、四十―七十歳に限ると男性では二人に一人、女性では五人に一人になる計算だ。
糖や血圧など個別の数字が明らかに病気と言えるほど高くなくても二つ、三つと重なると脳卒中、心筋梗塞(こうそく)、糖尿病などの生活習慣病の発症率が高まる。個人の命にかかわる事態を、重く受け止めねばならない。
ここに来て厚労省が生活習慣病対策として同症候群に照準を合わせたわけは、増え続ける医療費の抑制にある。対策を進めて同症候群を二〇二五年に半減させ、二兆六千億円の医療費削減を見込む。思惑通りに、ことは運ぶだろうか。
肝心なのは、やはり対策の中身である。厚労省は運動習慣の徹底と食生活の改善、禁煙が最善の策とする。だれしも思い当たることだが、いざ実践するとなるとなかなか難しい。
厚労省は二〇〇〇年に国民の健康増進と生活習慣病の減少を目指す「健康日本21」を策定した。肥満の割合、食塩摂取量、一日の歩数など七十項目で、十年後の一〇年までに達成する具体的な数値目標を決めた。しかし、いまのところ目標達成が困難な項目が多い。
一日の歩数にしても男女ともに逆に減っていて、運動習慣がある人の割合も増えてはいない。今回の国民健康・栄養調査でも一回三十分以上で週二回以上の運動習慣がある人は成人男性の約31%、女性は約26%にとどまっている。同症候群、生活習慣病の危機感が国民に浸透していない表れでもある。
こんな調査結果もある。既婚女性に夫の肥満度を尋ねた。夫の41%が同症候群の警戒水準であるウエスト八十五センチを超えているのに、妻の80%は夫の健康は問題ないと答えていた。よほど効果的な対策を打ち出さねば掛け声倒れになる。
健康診断と保健指導の見直しは当然だ。いっそう充実、強化しなければならない。受診率アップはもちろんのこと、予備軍にも生活習慣の改善を粘り強く促していく必要がある。
何より大切なのは国民一人一人の意識改革だろう。かけがえのない財産である健康を、自分で守る意識を高めたい。
(2006/05/10(水)愛媛新聞社より)